遺伝子の異常な融合が皮膚がんの発生に関与
熊本大学生命科学研究部、神人准教授らの研究チームは、血管肉腫では通常の遺伝子変異とは異なり、NUP160とSLC43A3の2種類の遺伝子が異常に融合していることを発見し、この融合遺伝子ががんの発生に関わっていることを北里大学との共同研究でつきとめた。
背景
皮膚がんの幾つかのタイプの中でも、血管肉腫は血管やリンパ管の細胞から発生し、特に見逃されやすいにもかかわらず、非常に進行が早く、リンパ節や内臓に転移していく。さらに、放射線療法、化学療法あるいは手術療法等の治療効果が出づらく、もっとも予後の悪いがんの一つとして知られている。
がんの主な原因として、いわゆるがん遺伝子の変異が知られており、皮膚がん以外のがんにおいては、がん遺伝子の変異を検出して診断に役立てたり、変異したがん遺伝子に対する治療が効果を発揮することが明らかになったりしているが、皮膚がんのがん遺伝子の多くはいまだよくわかっていない。
研究成果
研究グループは、血管肉腫のガン細胞が通常の遺伝子変異とは異なり、NUP160とSLC43A3という本来は別々の遺伝子が異常に融合していることをトランスクリプトーム解析で発見した。この「融合遺伝子」は染色体の一部が切り取られ、別の染色体とひっついた結果2つの遺伝子が融合して作られると考えられている。
研究過程において、融合遺伝子NUP160-SLC43A3が陽性の患者で、がんの進行が早い可能性が示され、血管肉腫以外の皮膚がんではこの融合遺伝子は検出されなかった。さらに、マウスを用いた実験でも、この融合遺伝子ががんの発生に関係することを証明されるとともに、治療につながる可能性も確認された。
今回の血管肉腫における融合遺伝子の発見は、皮膚がんの原因の解明だけでなく、近い将来簡単な診断や進行の速さの予測、そして特効薬の開発にも役立つ可能性がある。
(画像はプレスリリースより)

熊本大学 プレスリリース
http://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakujouhou/kouhou/press