前立腺がん 新たな治療法
慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室の大家基嗣教授と小坂威雄専任講師らの研究グループは、進行性の前立腺がん患者に対し、リバビリンによる、抗がん剤が効かなくなったがんに再び抗がん剤が効くよう巻き戻す、リプログラミング療法を用いた臨床試験を施行し、成功した。
背景
現在、ドセタキセル療法は日本も含め世界中でホルモン療法後の進行性の前立腺がんに対する標準治療となっている。日本においては、2008年の認可以降、現在にいたるまで、前立腺がん患者に対して日常臨床で広く使用されている有効性・安全性の確立した抗がん治療である。
患者の多くは、ドセタキセル療法が投与初期に有効性のある場合でも、いずれ効果が減弱して前立腺がんが再び増殖するようになる。ドセタキセル療法が効かなくなった患者に対する有効な治療はなかった。
研究成果
研究グループは以前の研究で、ドセタキセルが効かないがんに対して有望な薬剤として、抗ウイルス薬リバビリンを同定した。リバビリンは、ドセタキセルが効きにくい、がん幹細胞性の高いマウス皮下腫瘍モデルにおいてドセタキセルと併用し、有効性が確認された。
リバビリンはドセタキセルが効かないがんを効くがんへと巻き戻すことのできる薬剤で、このような概念から発見した薬物を用いた治療方法を総称して、研究グループはリプログラミング療法と名づけた。
ヒト臨床研究の結果、リバビリンを併用したドセタキセル療法は、有害事象も許容内であり、腫瘍マーカーPSAを指標とした有効性の評価として40%の症例において、また、1例において転移巣の著明な奏効を認め、非臨床POC(Proof of Concept:概念実証 動物実験で得られた有効性)を裏づけするデータだった。
今回の研究により、ドセタキセルが効かない、進行性の前立腺がん患者に対しての新たな治療法となることが期待される。
(画像はプレスリリースより)

慶應大学 プレスリリース
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2015/osa3qr0000016964