光で働く細胞内のカゴ状スイッチを開発
2015年9月10日、東京工業大学大学院生命理工学研究科の上野隆史教授と藤田健太大学院生らは、合成した分子のカゴをスイッチとした細胞内一酸化炭素放出システムの開発に成功したと発表した。
背景
ヒトのからだは、体内に存在する様々なガス分子が伝達する信号によって保護されている。様々なガス分子の中でも一酸化炭素は特に、生体内での取り扱いが難しい分子だった。
金属カルボニル錯体と呼ばれる金属との結合により、生体内へ一酸化炭素を輸送することが可能となり、一酸化炭素が抗炎症作用や細胞増殖などの細胞を保護する機能を持つことが徐々に明らかになっている。しかし、放出のタイミングや量の制御が困難であり、一酸化炭素が細胞内で伝達する信号を詳細に理解するには至っていなかった。
研究成果
今回の研究により、マンガンカルボニル錯体とフェリチンとの複合体が、光に応答する一酸化炭素放出スイッチとしての機能を有しており、一酸化炭素放出のタイミングや量を人工的に制御できる性質を持つことが明らかになった。
一酸化炭素が細胞を保護する役割をもつたんぱく質を標的としている核転写因子、NF-κBを効率的に活性化させるには、光照射によって一酸化炭素が放出され、その信号が伝達された後に、NF-κBの活性化因子であるTNF-αの刺激が加えられることが重要であると分かった
以上の一酸化炭素の効果は、細胞内で一酸化炭素放出スイッチとして機能する新しい細胞研究手法、合成したマンガンカルボニル錯体とフェリチンとの複合分子を用いることによって初めて明らかにされた。
(画像はニュースリリースより)

東京工業大学 ニュースリリース
http://www.titech.ac.jp/news/2015/032146.html