薬用・健康機能成分の効率的生産や創薬、育種に
2015年8月3日、千葉大学大学院薬学研究院の吉本尚子助教、齊藤和季教授らは、国立研究開発法人理化学研究所、ハウス食品グループ本社株式会社、湧永製薬株式会社との共同で、ニンニクの薬理効果や健康機能作用の本体である含硫黄化合物アリイン生産の鍵となる、酵素遺伝子を世界で初めて発見したと発表した。
ニンニクは古くから世界中で薬用利用されており、近年では発癌抑制や循環器疾患改善効果が注目されている極めて有用な植物である。
ニンニクの示す薬理作用や健康機能効果の本体は、ニンニク自身が生産する含硫黄化合物アリインである。アリインは含硫黄ペプチドであるグルタチオンから複数の特異的な酵素反応を経て合成されると考えられているが、アリインの生合成に関わる酵素や生合成経路の詳細は長い間明らかにされていなかった。
研究内容
研究グループは、ニンニクが属する、ネギ属植物の遺伝子配列の生物情報学的解析に基づき、アリイン生合成の鍵となる酵素遺伝子「AsFMO1」の同定に成功した。
AsFMO1遺伝子から作られるAsFMO1蛋白質の酵素機能を解析した結果、この酵素がアリイン生合成経路の最終段階において、生合成中間体の硫黄原子を酸化する機能を持つことが判明し、AsFMO1 蛋白質はフラビン含有モノオキシゲナーゼと呼ばれる比較的珍しい、酸化酵素の一種であることがわかった。
また、ニンニク植物体における AsFMO1 遺伝子の発現部位とアリイン貯蔵部位を解析した結果、AsFMO1 はニンニク植物体の様々な組織で発現してアリイン生産に関与していることが示された。
今回の研究により、薬学的な重要性にも関わらず長い間不明であったニンニクにおける、アリイン生合成の鍵酵素がゲノム科学的アプローチによって世界で初めて同定された。
今後への期待
AsFMO1遺伝子の機能を応用することにより、植物や微生物を用いた有用含硫黄化合物の生物生産系における開発、新規の薬効を示す含硫黄化合物の創薬、薬用性が高いニンニクやその他のネギ属植物の効率的な育種など、幅広い産業での利用が期待できる。
(画像はニュースリリースより)

千葉大学 ニュースリリース
http://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/pdf/2015/