新しい免疫応答機構 IL-33がカギ
2015年7月22日、東京大学医科学研究所の中江進准教授らは、国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所などとの共同研究によって、気管支喘息を抑える新しい免疫応答機構を発見したと発表した。
気管支喘息 背景
現在世界で3億人以上いるとされる気管支喘息患者は年々増加の一途を辿っている。ステロイドやβ-アドレナリン受容体選択的刺激薬の吸入による対症療法により、気管支喘息による死亡率は以前より減少したが、未だ年間25万人もの患者が死亡している。
薬剤吸入によって気管支喘息を一時的に抑えることはできるが、完治はできず、長期間薬剤の継続投与が必要となるため、気管支喘息の完治を目指す、新たな治療法の開発が望まれている。
近年、欧米で行われているリウマチなどの自己免疫疾患や臓器移植での拒絶応答を抑える新しい治療法である、制御性T細胞の移植は気管支喘息などのアレルギー疾患においても有効な治療法として期待されている。
血中から取れる制御性T細胞は非常にわずかであるのに対し、この治療には、大量の制御性T細胞が必要となることが難点だった。
マスト細胞による制御性T細胞の増加
マスト細胞はアレルゲンと結合したIgE抗体によって刺激されると、気管支喘息を含む様々なアレルギー疾患を悪化させる。しかし、今回マスト細胞がIL-33という体内分子で刺激されると制御性T細胞だけを選択的に増やし、その結果、気管支喘息を抑制する作用があることが初めて明らかになった。
マスト細胞の機能のうち、制御性T細胞の誘導能のみを発揮させる方法を確立することにより、気管支喘息のみならず、アレルギーや自己免疫疾患、臓器移植での拒絶応答に対する、新たな治療法の開発につながる可能性がある。
(画像はプレスリリースより)

東京大学医科学研究所 プレスリリース
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/150722.pdf