備蓄用途では初
富士フイルム株式会社は、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」を台湾政府機関である衛生福利部疾病管制署(以下台湾CDC)に、2015年7月13日に備蓄用途として供給した。
感染症対策を担当する台湾CDCの決定は、鳥・豚インフルエンザおよび新型インフルエンザに台湾国民が感染するリスクに備えるための措置である。
なお、アビガン錠は台湾衛生福利部食品薬物管理署の製造販売承認を未取得であるため、このたび特例輸入として扱われた。同錠の備蓄用途での供給は同社にとって初となる。
アビガン錠への期待
富士フイルムグループの富山化学工業株式会社が開発したアビガン錠は、2014年3月、日本での製造販売承認を取得している。
国内臨床第III相試験で実施した国際共同治験に台湾からも被験者を募った経緯があるなど、台湾CDCが同錠の作用メカニズムに寄せる評価は高く、今回の決定に至った。
細胞内で複製した遺伝子を増殖、放出して感染を拡大するインフルエンザウイルスの性質に対して、従来のノイラミニダーゼ阻害剤は、ウイルスの放出を阻害する作用を働かせていた。
一方、アビガン錠はRNAポリメラーゼ阻害剤として、細胞内の遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐものである。このメカニズムが鳥インフルエンザウイルスに効果があると期待されている。
供給されたアビガン錠は鳥・豚インフルエンザや新型インフルエンザにヒトが感染した時点で投与され、同社はその推移について情報を受けることになっている。同社は、台湾での製造販売承認を早期に取得する考えである。

富士フイルム株式会社 プレスリリース
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