今までにない新しい機序
2016年4月6日、順天堂大学医学部病理・腫瘍学講座・松岡周二助教と理化学研究所統合生命医科学研究センター・石井保之ワクチンデザイン研究チームリーダーらの研究グループは、悪性リンパ腫細胞や成人T細胞白血病(ATL)細胞を新規の機序で死滅させる抗体の樹立を発表した。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は血液腫瘍の中で最も頻度の高い疾患であり、日本では年間1万人以上が発症している。
非ホジキンリンパ腫の一種であるB細胞リンパ腫や成人T細胞白血病において有意な治療効果を示す抗体医薬が開発されているが、一部の効果がみられない患者や、一度寛解しても、標的分子を欠失した耐性株が出現し、再発する患者も多いという現状がある。
そのため、多くの種類の悪性リンパ腫に対する傷害活性をもち、悪性リンパ腫や白血病細胞に選択的に有効で、耐性株の出現しにくい分子標的治療薬開発が望まれている。
研究成果
研究グループは通常行われているような方法ではなく、複数の悪性リンパ腫で免疫したマウスの抗体産生細胞を用いて融合細胞を作製、悪性リンパ腫細胞への細胞傷害活性を指標にスクリーニングした結果、複数の分子に結合し、多くの悪性リンパ腫に傷害活性を有する抗体を得た。
得た抗体は血液がん細胞に短時間で巨大な穴を直接あけるという特徴的な作用をもち、かつ、補体非依存性に傷害活性を示した。また、悪性リンパ腫細胞を移植したマウスの生存を有意に延長し、さらに、血液のがん細胞だけを攻撃することが明らかとなった。
今回の研究により、免疫細胞や補体を必要とせず直接がん細胞を破壊する抗体が樹立され、その抗体は、耐性株が出現し治療抵抗性を得た再発がんにも高い効果を得た。今後、今までの抗がん剤や分子標的薬で治療できなかった患者や再発した患者に対し、効果的な新規治療薬開発が期待される。
(画像はニュースリリースより)

順天堂大学 ニュースリリース
http://www.juntendo.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00015320