国立がん研究センター・東京大学・第一三共
2016年3月22日、国立研究開発法人国立がん研究センター、国立大学法人東京大学及び第一三共株式会社は、血液がんに対する新規分子標的薬を共同開発し、成人T細胞白血病リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)を含む悪性リンパ腫患者に対する第I相試験の開始を発表した。
今回の第I相試験は国立がん研究センター中央病院を中心に、他の施設でも準備を進めている。
背景
悪性リンパ腫は血液のがんのひとつで、抗がん剤により十分な治療効果が得られないことがあり、いったん効果が得られても再発することが多い。特に日本に多い悪性リンパ腫であるATLは、原因となるヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)キャリアの数が、日本で約120万人と推定され、その約5%がATLを発症する。
しかし、ATLの発症予防法や有効な治療法は確立していないのが現状である。日本は先進国における唯一のHTLV-1の流行国であり、国際的にもATLの有効な治療法の確立と発症予防につながる新たな治療法開発の先導が期待されている。
研究成果
悪性リンパ腫の予後が悪い一因は、がん細胞再生能力をもつ、「がん幹細胞」が治療後も残存するためと考えられている。そのため、「がん幹細胞」を根絶こそが血液がんの根治に重要である。
国立がん研究センター研究所・北林一生研究分野長の研究グループは、がん幹細胞の維持に必須な酵素としてEZH1/2を発見し、ふたつの酵素を共に阻害することで、「がん幹細胞」を根絶、治療抵抗性をなくし、再発を抑制することを示唆する研究結果を得た。
また、東京大学・渡邉俊樹教授、山岸誠特任助教を中心とする研究グループは、ATLの発症及び進展にEZH1/2に依存的なエピゲノム異常があることを発見し、また、EZH1/2二重阻害がATL細胞生存能の低下に高感度かつ特異的に働くことを見いだした。

国立がん研究センター プレスリリース
<a href=" http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160322.html " target="_blank"> http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_201603</a>