2016年3月9日、チオプリン高感受性遺伝子(NUDT15)多型と薬剤感受性メカニズム 解明
三重大学大学院医学系研究科・堀浩樹教授と同大学院博士課程・森山貴也は、国際共同研究チームとともに、チオプリン製剤の代謝に関わる「NUDT15」遺伝子について、遺伝子多型が薬剤の感受性を高める分子メカニズム及び生体内における薬物動態を初めて解明したと発表した。
一般に、「NUDT15」は酸化ストレスによるDNA損傷抑制酵素として知られているが、今回の研究で「NUDT15」の機能がチオプリン代謝においても重要な役割を持ち、副作用に関与することがわかった。
背景
「小児急性リンパ性白血病(ALL)」では、治療戦略の一環としてチオプリン製剤の有効性が既に証明されており、これまでに「NUDT15」遺伝子の多型がチオプリン高感受性に関与することがわかっている。
一方で、日本人を含む東アジア人種において、「NUDT15」遺伝子多型の割合が高く、薬剤の効き過ぎによる副作用である骨髄抑制を起こしやすいことが知られていた。しかし、それら遺伝子多型が薬剤高感受性をもたらす分子メカニズムや、チオプリン代謝産物の生体内動態と多型との関連性については明らかにされていなかった。
研究成果
研究グループは、日本人を含むアジア人とヒスパニック系を中心とした小児白血病患者を対象に「NUDT15」遺伝子を詳細に解析した結果、既知の多型に加え3種類の新規多型を同定し、多型により「NUDT15」の機能が失われることを発見した。
今回の研究成果によって、「小児急性リンパ性白血病(ALL)」の抗がん剤治療において、事前の遺伝子診断で、患者の体質に合わせた抗がん剤の投与量調節ができるようになり、副作用として発生していた感染症のリスクを減らすことが可能となる。
また、日本人では「NUDT15」遺伝子多型を3人に1人の割合で持っていることから、「NUDT15」遺伝子多型を考慮に入れることが重要であり、遺伝子多型に応じたチオプリンの、オーダーメイド医療への導入促進が期待される。
(画像はプレスリリースより)

三重大学 プレスリリース
<a href=" http://www.mie-u.ac.jp/R-navi/release/cat456/nudt15--.html " target="_blank"> http://www.mie-u.ac.jp/R-navi/release/cat456/nudt15--.html </a>