補体因子C5aが鍵
2016年2月17日、東京医科歯科大学大学院血管代謝探索学分野・先進倫理医科学分野の大坂瑞子助教、吉田雅幸教授らの研究チームは、高脂肪食摂取による動脈硬化症の発症に、好中球の活性化が重要であり、C5aと呼ばれる補体因子が鍵となることを世界で初めて明らかにしたと発表した。
背景
過剰な脂質摂取は動脈硬化症の発症に関わり、血中コレステロール値の高さが動脈硬化症・心筋梗塞のリスク上昇につながること、血中のコレステロール値低下を促す薬剤による、心筋梗塞のリスク低下が知られている。
しかし、食事からのコレステロール摂取と動脈硬化症との関連についてはエビデンスが少なく、なぜ食事からの脂質の過剰摂取が身体に悪いのか、十分には解明されていなかった。
研究チームは今までに、動脈硬化症につながる血管炎症を観察するための実験を行い、動脈硬化症モデル動物の大血管において白血球接着現象が亢進していることを見つけていたが、食事由来脂肪の影響のみが血管炎症を起こすかどうかは知られていなかった。
研究成果
研究チームは、高脂肪食の摂取によって好中球を活性化するC5aが血液中に増加し、その結果、大血管に好中球の接着現象が誘導されることを見いだし、また、C5aによって活性化された好中球はMCP-1と呼ばれる単球活性化因子を積極的に産生し、慢性炎症としての血管炎症状態に移行することが分かった。
さらに、C5aの中和抗体によって、好中球の活性化は抑制され、MCP-1の産生も抑制されることから、C5aが脂肪摂取と血管炎症を結ぶ鍵分子であると同定された。
今回の研究結果は動脈硬化症だけでなく、血管炎症反応が関わる、様々な病態発症の機序解明につながる重要な発見である。今後、好中球活性化因子C5aを標的とする新たな動脈硬化症・心筋梗塞の診断・治療戦略の開発が期待される。
(画像はプレスリリースより)

東京医科歯科大学 プレスリリース
<a href=" http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20160222.pdf" target="_blank"> http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20160222.pdf</a>