酵素「PEMT」の発現低下がカギ
2016年2月17日、岡山大学大学院・和田淳教授、中司敦子助教らの研究グループは、肝臓の酵素である「PEMT」を働かなくすると、脂肪肝の発症、さらには非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へ進展することを示し、PEMT発現量の低下によりNASHへ進展するメカニズムを明らかにしたことを発表した。
背景
近年、メタボリックシンドロームや糖尿病に伴い、非アルコール性脂肪肝やNASHの患者数が増加している。一方で、肥満や糖尿病がなくても起こる脂肪肝・脂肪肝炎はあまり知られていない。
PEMT遺伝子の一塩基多型(SNP)を持つ人は、NASHのリスクがあると報告されており、PEMTの働きの低下による、肝臓から放出される中性脂肪の低下が起因していると考えられてきた。しかし、炎症・線維化がなぜ起こるのか、そして脂肪肝炎に進展するメカニズムは解明されていなかった。
研究成果
研究グループは、PEMT欠損マウスにおいて、野生型マウスと比べて肥満が抑えられるが、早期から著しいNASHを発症し、多発性肝腫瘤が出現することを発見した。また、患者においても、単純性脂肪肝よりもNASHの肝臓でPEMT発現が低下し、肥満のない痩せたNASHにおいてPEMT発現がより低下することを見いだした。
さらに、PEMT欠損により、CHCとp53がアポトーシスに関連した転写を活発化させ、肝細胞アポトーシスが強まり、炎症が起こるというメカニズムを解明し、Fbxo31、HNF4α遺伝子のDNAメチル化が亢進し、両遺伝子の発現抑制が起こることによって、細胞増殖に関係するcyclinD1の発現が著しく増強することも新たに発見した。
今後、肝組織や血球細胞を用いてPEMTの量や働きを測定したり、SNPの有無を調べたりすることにより、脂肪肝から脂肪肝炎へと進行する、リスクの高い症例の判断が可能となる。
(画像はプレスリリースより)

岡山大学 プレスリリース
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id367.html