細胞内タンパク質輸送の異常
2016年2月3日、大阪大学大学院薬学研究科・中澤敬信特任准教授、東京大学大学院医学系研究科・狩野方伸教授、大阪大学大学院連合小児発達学研究科・橋本亮太准教授のグループは、細胞内タンパク質輸送を介したシナプス機能調節のメカニズムを発見し、細胞内のタンパク質輸送の異常が脳高次機能に障がいを与えることを見いだしたと発表した。
背景
統合失調症などの精神疾患では、シナプス形成やシナプス機能の調節の異常が発症の原因の一つであると考えられている。
現在までの研究で、シナプスの形を作る細胞骨格系のタンパク質、シナプス形成に関与する細胞接着分子群、あるいはシナプス伝達を調節する分子群の異常が精神疾患の発症と関連している可能性があることが明らかになりつつある。しかし、精神疾患の病態は非常に複雑であり、発症の分子基盤は不明な点が多く残されている。
研究成果
中澤特任准教授らは、これまでの研究により、シナプス形成の制御を神経細胞に豊富に発現するARHGAP33分子が行っていることを明らかにしてきた。
今回、基礎・臨床の両研究者からなるグループによる共同研究で、ARHGAP33分子が細胞内タンパク質輸送を介して神経シナプスの機能を制御することを明らかにし、ARHGAP33分子の欠損が脳高次機能異常を引き起こすことを見いだした。また、細胞内タンパク質輸送の異常が精神疾患の原因の一端である可能性が明らかとなった。
今回の研究によって、精神疾患と関連する脳高次機能異常の分子メカニズムを見いだしたことは、精神医学領域や基礎医学・薬学領域において極めて注目される成果であり、今後、統合失調症等の精神疾患の新規創薬研究に発展することが期待される。
(画像はプレスリリースより)

日本医療研究開発機構 プレスリリース
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