HIV-1の感染経路
理化学研究所と熊本大学の共同研究グループは、2016年1月18日、エイズウイルスの細胞間感染の新たなメカニズムを解明したと発表した。
エイズ(後天性免疫不全症候群)は、原因ウイルス、HIV-1が免疫細胞のTリンパ球とマクロファージに感染し、増殖した新たなHIV-1が感染を拡大する。感染細胞から未感染細胞にHIV-1が感染する経路には、感染細胞の外に出て周囲の未感染細胞に移る場合と、細胞膜ナノチューブ(TNT)を介する場合があるが、そのメカニズムは不明だった。
細胞間をつなぐTNT
免疫系細胞のマクロファージや樹状細胞には、細胞膜の細い管であるTNTを作り、細胞間をつなぐTNTで物質交換をする機能がある。HIV-1などのウイルスや病原タンパク質がこのTNTをハイジャックして移動するため、感染拡大や、免疫機能の抑制を招いて病態を悪化させる。
今回、共同研究グループは、HIV-1のウイルスタンパク質Nefが宿主マクロファージのTNT形成因子M-Secの働きを制御することでTNTの形成を促進し、マクロファージ細胞間感染の効率を上げること、TNTの形成を抑制することでHIV-1の細胞間感染を約半分に抑えることを発見した。
今後、詳細な分子メカニズムを解明できれば、HIV-1の感染や病態形成の詳細も明らかになると考えられる。また、TNT形成阻害薬は、宿主によるTNT形成を標的とし、薬剤に耐性を持つウイルス出現の可能性が低いため、従来の抗エイズ薬と併用した効果的な治療の開発を期待できる。
(画像はプレスリリースより)

理化学研究所・熊本大学 プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160118_1/