臨床応用に向けて
2015年1月21日、理化学研究所統合生命医科学研究センター循環器疾患研究グループ・尾崎浩一上級研究員、田中敏博グループディレクターらの共同研究グループは、虚血性心疾患(CAD:Coronary Artery Disease)の発症に関連する新たなSNPを同定したことを発表した。
背景
狭心症や心筋梗塞などのCADは生活習慣病の中でも特に重い症状を示し、日本における死因の上位を占める。
CADは冠動脈の内側に粥状動脈硬化(プラーク)が発生し、蓄積することで心筋への血流不足が引き起こされ、心機能の低下が原因で発症する。プラークの発生、進展には様々な要因があるとされているが、根本的な発症メカニズムは解明されていない。
一方で、発症には環境的要因に加え、遺伝的因子が深く関係することも明らかになってきており、遺伝的因子の詳細な解析は発症メカニズムの解明のみならず、新たな予防法や治療法の開発に大きく貢献すると考えられる。
研究成果
共同研究グループは、欧米人においてSNPを用いたゲノムワイド関連解析により、新たに同定されたCADの発症に関わる座位について、日本人CAD患者7990人、非患者6852人のDNAを用いて再検証解析を行った。
その結果、日本人においてFLT1遺伝子内の1つのSNPが、CAD発症と非常に強い関連を示すことを確認した。その遺伝子領域を詳細に解析したところ、欧米人において発見されていたSNPとは異なる、CADとの関連がより強いSNPが発見された。
発見されたSNPによるFLT1遺伝子の発現上昇に関与することと、FLT1遺伝子の発現変化により、CADの発症につながる可能性があることが分かった。
今後、FLT1遺伝子を対象にさらなる分子医科学解析を行うことにより、CADの原因解明が進むことが期待できるとともに、薬学的アプローチとの組み合わせにより、新たな治療法や予防法の開発につながる可能性が考えられる。
(画像はプレスリリースより)

理化学研究所 プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160121_2/