海外渡航歴のない人まで
蚊による伝染病媒介など、戦中戦後の昔の話か遠い開発途上国でのこと、と油断していた日本国民に、冷や水を浴びせかけたのがデング熱の国内感染だ。海外渡航歴のない人までもが次々感染する中、大手製薬会社などが治療薬、予防薬、蚊の忌避剤の開発を急いでいる。
(画像はイメージ、Pixabayより)
蚊についてはこれまで、刺された時のかゆさや耳元でうるさいといったイメージが強かったが、今回話題となっているデング熱のほかにも、多数の感染症を蚊が媒介している。
製剤化へ続々と表明
デング熱の感染を媒介するのは「ヒトスジシマカ」という種類。人から人に直接感染しないが、感染者を刺した蚊に刺されると感染する可能性がある。症状は、急な発熱や関節痛、目の奥の痛みなど。致死率は低いが、重篤化した場合は死に至る可能性もある。
日本脳炎は主に「コガタアカイエカ」という蚊が媒介する。感染した場合の発症率は0.1~1%と低いが、発症すると高熱が出て、痙攣や意識障害に陥り、脳炎となる。発症時の致死率は20~40%程度。また、回復しても半数以上に麻痺などの後遺症をもたらす。
このほか、野口英世が亡くなる原因となった黄熱病、西ナイル熱、マラリア、チクングニア熱など、蚊といえど軽く見てはいけない。
こうした状況を背景に、医学生物学研究所は「完全ヒト型抗デングウイルス抗体」の開発に成功し、製薬会社などと提携して製剤化を目指すことを表明した。フランスの大手製薬会社のサノフィは、デング熱予防に効果がある世界初のワクチンについて、臨床試験で効果が確認されたと発表。2015年の実用化を目指すという。
蚊を寄せ付けない機能性パジャマも
武田薬品工業は、昨年5月に買収した米ワクチン開発ベンチャー「インビラージェン社」でデング熱などのワクチン開発を進めている。来年度中に第三相臨床試験の開始を目指している。
一方、感染を未然に防ぐため、媒介する蚊を寄せ付けない製品開発も進んでいる。「正露丸」で知られる大幸薬品は、除菌・消臭スプレーに使う「二酸化塩素ガス溶存液」に、蚊を寄せ付けない効果があるとして、特許取得を発表した。
また、下着などを製造・販売するグンゼは、蚊が嫌うにおい成分入りマイクロカプセルを生地の表面に付着させたパジャマの開発に乗り出したことを明らかにした。
治療薬が一般に出回るまでにはまだ時間がかかる見通しだが、デング熱発症者は世界で拡大しており、各社は国内外での需要に対応する狙いだ。

医学生物学研究所 ニュースリリース
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat武田薬品工業ニュースリリース
http://www.takeda.co.jp/news/2013/20130508_5756.html