身体的・精神的・社会的問題を包括する概念
日本老年医学会は、2014年5月13日、高齢者の“虚弱”を表す用語として「フレイル」を使用することを学会ホームページに発表した。
現在の日本では、65歳以上の高齢者が全人口の2割を占める超高齢社会を迎えており、それに伴って要介護状態の高齢者数が増加している。今後、75歳以上の後期高齢者の増加が見込まれるが、こうした人の多くは、突然、健康な状態から要介護状態へ陥るのではなく、“Frailty(虚弱)”という中間的な段階を経て、徐々に要介護状態へ移行していくと考えられる。
“虚弱”という言葉からは生活機能障害や筋力低下などの身体的な問題が連想されるが、それだけでなく、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、また独居や経済的困窮などの社会的問題を含む包括的な概念である。
老年医学の分野では、病態生理だけでなく、診断、介護予防の観点から、近年、“Frailty”の重要性がクローズアップされている。しかし、医療・介護専門職にはほとんど認識されておらず、介護予防や臨床での適切な対応の障壁となっていることから、広く周知することが必要とされてきた。
「フレイル」の周知により高齢者のQOL向上が期待される
Frailtyは「虚弱」と訳されることが多いが、この訳語では“加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態”という印象が強い。しかし、Frailtyには適切な介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されている。そこで同学会では、Frailtyの認知度を上げるためのワーキンググループを設け、日本語訳を検討。その結果、「虚弱」に代わり「フレイル」を使用することとした。
同学会は「高齢者の医療介護に携わるすべての専門職が、食事や運動によるフレイルの一次、二次予防の重要性を認識すべきである。このような活動を介して、高齢者のQOLの向上を図ることが可能となり、介護に関わる費用の減少が期待できる」としている。

フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント(日本老年医学会)
http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20140513_01_01.pdf