添付文書の遵守が重要
糖尿病治療薬であるビグアナイド薬の投与患者で乳酸アシドーシスが報告されていることをうけて、日本糖尿病学会は今般、「ビグアナイド薬の適正使用に関するRecommendation」を学会ホームページに発表した。
ビグアナイド薬は肝臓の糖新生の抑制や消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン感受性などの作用により、血糖降下作用を示す薬剤。血糖コントロールにおいて体重が増加しにくいため、過体重、肥満の2型糖尿病患者では第一選択薬とされ、日本ではメトホルミンおよびブホルミンが用いられている。
一方で、ビグアナイド薬の重篤な副作用として乳酸アシドーシスがある。乳酸アシドーシスは、さまざまな原因で血中に乳酸が蓄積し、血液が顕著に酸性となった状態で、死亡率は約50%とされる。初期症状は消化器症状などの非特異的な症状であるが、数時間放置すると昏睡状態となり、予後は不良である。
海外ほど発症頻度は高くないものの、日本においてもビグアナイド薬の服用例で乳酸アシドーシスが報告されていることから、日本糖尿病学会ではその症例についての詳細な検討を行った。
その結果、乳酸アシドーシス例には「腎機能障害患者」、「脱水やシックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態」、「心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者」、「高齢者」が多く認められた。ほとんどが禁忌または慎重投与とされる事項への違反によるものであり、まずは添付文書を徹底して遵守することが必要とされる。
これらの特徴をもつ患者では、高齢者だけでなく若年者や少量投与例でも乳酸アシドーシスが報告されており、また、投与量や投与期間に一定の傾向は認められなかった。
“全身状態が悪い患者には投与しないことが大前提”
この調査結果から、日本糖尿病学会の「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」は、ビグアナイド使用における注意点を発表した。まず、「経口摂取が困難な患者や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提」としたうえで、添付文書上の禁忌・慎重投与例に留意することとされる。
同委員会は「乳酸アシドーシスの発現を避けるためには、投与にあたり患者の病態・生活習慣などから薬剤の効果や副作用の危険性を勘案した上で適切な患者を選択し、患者に対して服薬や生活習慣などの指導を十分に行うことが重要」とよびかけている。

ビグアナイド薬の適正使用に関するRecommendation
(日本糖尿病学会)
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