年内にも新たな治療法開始
さまざまな療法が用いられているがん治療だが、現在行われている治療の多くは副作用などで患者の負担が大きい。こうした状況の下、これまでと一線を画した新しいがん治療法が、年内にも国内で始まる見通しとなった。厚生労働省が昨年末、小野薬品工業から承認申請を受けた医薬品「ニボルマブ」を用いたもので、既存の治療法で効果がなくなった皮膚がんの患者が対象。免疫の攻撃力を利用する「免疫療法」の一種だ。
(画像はイメージ、ウィキメディア・コモンズより)
小野薬品工業が厚生労働省に医薬品としての承認を申請したのは、昨年12月24日。リンパ球を抑制するPD-1の作用を減弱させ、がん細胞への免疫反応を増進する薬剤で、必要性が高い医薬品として優先的に審査され、今秋にも認められる見通しだ。
これまでにない発想
これまでの研究で、がん細胞はリンパ球が持つ免疫作用を抑制するシステムを利用し、免疫からの攻撃を免れ増殖することが分かっている。このシステムにニボルマブが関与し、免疫の抑制を解除して免疫機能によってがん細胞の排除反応を増強する。免疫抑制解除という、これまでにない発想に基づいており、がんの有効な治療法になるのではないかと期待される。
ニボルマブは小野薬品と米メダレックス社の創製品だが、2009年にBMSがメダレックスを買収しており、現在は小野薬品が日本・韓国・台湾の開発・商業権を持っている。それ以外の国・地域での開発・商業権はBMSが保有。他のがんの適応でも開発が進められており、日本では非小細胞肺がんでフェーズ2(P2)、腎細胞がんでP3が進行中。
これまでの抗がん剤は、ある種の毒性を利用して疾患の原因となっている微生物やがん細胞の増殖を阻害することを目的としていたため、嘔吐や脱毛といった強力な副作用を生じ、患者の負担も大きかった。自己免疫を強化させることでがん細胞と戦わせる免疫療法薬は副作用の心配が少ないものの、保険対象となっておらず、自己負担が高額になる点がネック。ニボルマブは、認可されれば公的な医療保険が使える初の免疫療法薬となる。
悪性黒色腫は悪性度が非常に高いがん。年齢別にみた悪性黒色腫の死亡率は、男性で60歳代、女性では70歳代から増加。発生部位は足の裏が最も多く、体幹や顔面、爪に出ることもある。国内においては、外科手術で切除不能な場合、予後は「極めて悪い」とされており、予後を有意に改善する薬物療法もなかった。

小野薬品工業ニュースリリース
http://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n13_0603.pdf