今までの常識を覆した発見とは
慶應義塾大学医学部の先端医科学研究所は日本大学との共同研究により、アクチン細胞骨格の動態が脂肪分化を誘導するメカニズムを解明したと発表しました。
今まで細胞生物学の常識として、「細胞は、はじめに特異的な転写因子の発現によって機能的および形態的に分化する」という考えがありましたが、これではなく細胞の形態が変化することによってその細胞の運命が決まるというメカニズムの一端が明らかになりました。
(画像はプレスリリースより)
今回の研究結果の内容
今回の研究では脂肪細胞だけではなく心筋や骨などの細胞に分化するという多能性を有する脱分化脂肪細胞株(DFAT)を用いることで、脂肪分化過程に着目し、アクチン細胞骨格の変化などを、継続して調べました。
その結果として、DFATが分化誘導して24時間以内にDFATがアクチンファイバーへとバラバラになり、48時間後にはDFAT特有の表層アクチンが形成されるということが発見されたのです。
今回の発見では、アクチン細胞骨格の変化によって、脂肪細胞の分化が誘導されるという現象が明らかになりました。このことが他の細胞における分化についても類似の現象が起こっているという可能性があります。
そのため、幹細胞から特定細胞への分化させる誘導を、より容易なものにする手段の開発が期待されています。また、未分化な性質をもっている癌幹細胞を終末分化に導くといった治療方法も理論的には可能となっているなど、今回の発見から様々な可能性が出てきました。

慶応義塾大学・科学技術振興機構 共同プレスリリース
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