がんの転移抑制へ期待
熊本大学大学院生命科学研究部(医学系)の尾池雄一教授らは、がん発症から浸潤・転移へと病態が進展する中で、がん浸潤・転移を促進させるタンパク質であるアンジオポエチン様因子2(ANGPTL2)のがん病態進展過程における活性化機構を解明し、さらにANGPTL2を不活性化させる分解酵素を発見した。
(画像は熊本大学ホームページより)
がん進展に関するメカニズムの解明を
がんは世界規模で増加の一途をたどっており、特にがんの浸潤・転移はがん死亡の直接的な原因となるため、がんの浸潤・転移に関わるメカニズムの解明は急務となっている。
がんの原発巣内では、がん細胞の急速な増殖に伴い、がん細胞の成長にとって不可欠な酸素や栄養が不足するといった、がん組織内の環境変化が生じる。
がん細胞は、その環境変化に応答し、高い浸潤能や転移能を獲得し、その結果としてがんの浸潤・転移が進み、がんが進展すると考えられているが、そのメカニズムについては不明な点が多く残されていた。
がん転移に対する治療法
これまでの研究において、分泌タンパク質であるアンジオポエチン様タンパク質2(ANGPTL2)が、肺がんや乳がんの転移を促進することを明らかにしてきたが、今回、骨の悪性腫瘍で最も頻度が高い骨肉腫においても骨肉腫細胞から産生・分泌されるANGPTL2が、骨肉腫の肺転移を促進することを明らかにした。
さらに今回、尾池教授らは、ANGPTL2がTLL1というタンパク分解酵素によって切断され、不活性化されることを見出した。
ANGPTL2は、がん細胞の浸潤能を増強することでがん転移を促進することから、TLL1によるANGPTL2の切断を促進することが、がん転移に対する治療法となる可能性が考えられ、今後、新たな抗がん転移薬の開発につながるとしている。

熊本大学プレスリリース
http://www.kumamoto-u.ac.jp/