薬の振る舞いと作用をリアルタイム計測することに世界で初めて成功
新潟大学、慶應義塾大学の合同研究チームは、針状の「ダイヤモンド電極センサー」を用いた薬物モニターシステムを開発し、東京大学の研究チームと共に、生きた動物の脳や内耳において、極めて狭い空間(1mm以下)におけるさまざまな「薬」の振る舞いとその作用を、リアルタイム計測することに世界で初めて成功した、と発表した。
同研究成果は、8月10日科学雑誌Nature Biomedical Engineeringのオンライン版に掲載された。
薬の濃度変化と細胞の電気信号をリアルタイム計測
研究グループは、ホウ素を含んだ特殊な「ダイヤモンド」を用い、動物実験で薬の挙動と作用の測定に、世界で初めて成功した。
今回開発した薬物モニターシステムは、薬の濃度を高感度で測定する先端が40μmの「針状ダイヤモンド電極センサー」と、細胞の電気信号を直接観察することのできる先端が1μmの「微小ガラス電極センサー」、の2つのセンサーから構成されている。
2つのセンサーを細胞のかたまり近傍に挿入し、時々刻々と変化する薬の振る舞いと細胞の働きを、同時にリアルタイムでモニターすることに成功した。
動物実験の1つは、ラットに抗てんかん薬ラモトリギンを静脈注射し、脳の細胞における、ラモトリギンの濃度変化と神経細胞の電気信号を測定した。その結果、薬の濃度が上昇すると細胞の電気活動が強く抑えられ、その後濃度はゆっくり変化し15分後下降した。
2つ目の実験では、モルモットに高血圧治療に使用される利尿薬ブメタニドを与え、内耳の細胞を測定した。
ブメタニドを静脈注射すると、濃度が急に上昇し、投与1分後には下降した。同時計測の内耳細胞の電気活動は、ブメタニドの濃度がピークになったころから低下した。また、薬の変化の様子は、ラモトリギンとは明らかに異なることが判明した。
薬物モニターシステムは、抗がん剤、抗うつ薬、抗生剤などの計測にも使える可能性があり、工夫をすれば、心臓や腎臓などでも測定できる、という。
今後、さまざまな病気の治療法の開発や創薬への活用に期待できる、とのこと。
(画像はプレスリリースより)

新潟大学のニュースリリース
http://www.niigata-u.ac.jp/