ALSの原因遺伝子産物「TDP-43」
東京農工大学・泉川桂一特任助教、首都大学東京・礒辺俊明特任教授らの研究グループは、8月9日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子産物である「TDP-43」について、新機能を発見したと発表した。
この研究は、JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)戦略的創造研究推進事業の一環として実施されたもの。「TDP-43」を標的としたALS治療薬の開発が期待できる知見だという。
様々なALSに共通の発症機構に関与
ALSは、脳と脊髄の運動ニューロンと呼ばれる神経細胞が選択的に死滅するため、全身の筋肉が麻痺するという深刻な病状を呈する難病。患者は、全身の筋力が低下し、主に呼吸器不全により死に至る。
ALS患者の約9割では、脳の病巣部の神経細胞で「TDP-43」の蓄積が見られるという。そのため「TDP-43」は、様々なALSに共通の発症機構に関与していると考えられてきた。
同研究グループは今回、独自に開発した最先端のRNA質量分析法を利用して、「TDP-43」とRNAの結合で生じる複合体を解析。「TDP-43」が標的とするミトコンドリアRNAの特定に至った。
発症機構の解明や早期診断、治療薬の開発に期待
同研究グループはさらに、「TDP-43」とRNAの結合がミトコンドリア機能を調節し、その異常が細胞死を誘導することも解明。RNA代謝異常症の発症機構の解明から治療薬の開発につながることが期待できる成果を達成した。
また同研究グループは今回の成果が、多くのALS患者に共通した発症機構の解明や早期診断、さらには治療薬の開発につながることが期待できるとしている。
(画像はプレスリリースより)

筋萎縮性側索硬化症原因遺伝子産物TDP-43の新機能を発見 - 国立研究開発法人科学技術振興機構
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20170809/index.html