治療薬創出につながる基盤情報を明らかに
東京大学大学院理学系研究科・濡木理教授らのグループは、8月10日、脂質分子LPAを受容する膜受容体の構造を解明したと発表した。
この成果は、同グループと東北大学大学院薬学研究科・青木淳賢教授のグループなどとの共同研究によるもの。乏毛症やがんの治療薬創出につながる基盤情報を明らかにする知見だという。
情報伝達物質のひとつ、LPA
多細胞生物の体を構成する細胞は、環境から多様な情報を受け取り、細胞内で適切な応答を起こすことで、環境に適応する。細胞外から細胞内への情報伝達は、細胞の表面に埋まっている様々な受容体タンパク質が、特定の情報伝達物質と結合することで行われる。
脂質の一種であるLPA(リゾホスファチジン酸)は、この情報伝達物質のひとつ。結合するLPA受容体が、6種類知られている。
濡木理教授らのグループは今回、LPA受容体のひとつであるLPA6の立体構造を、X線結晶構造解析により決定。また、この立体構造情報に基づく変異体解析により、「LPA分子は、LPA6が受容体側面に持つ溝にはまり込んで認識される」という仕組みも改名した。
がん組織での血管形成にも関与するLPA6
LPA6は、先天性乏毛症と呼ばれる毛髪疾患に関わることが知られている。また、がん組織などでの血管形成にも関与することが、示唆されている。
今回の研究で明らかになったLPA6の構造情報は、LPA6を標的とする薬剤開発の基礎となる情報を提供するものであると、同グループはする。また将来的には、先天性乏毛症治療薬や抗がん剤の創薬開発研究を大きく進展させるものになることが期待できるともしている。
(画像はプレスリリースより)

脂質分子LPAを受容する膜受容体の構造を解明 - 東京大学大学院理学系研究科・理学部
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2017/5493/