脳出血の発症頻度や血腫量に差が生じる要因
熊本大学は、8月8日、同学大学院生命科学研究部・循環器内科学の石井正将医師らが、不整脈で使用する抗凝固薬の種類によって血栓形成速度が異なることを明らかにしたと発表した。
この速度の違いは、各薬剤により脳出血の発症頻度や血腫量に差が生じる要因となっている可能性を示唆するものであると、同学はしている。
抗凝固薬服用患者の血栓形成過程を観察
今回の研究では、不整脈のひとつである心房細動を罹患し、抗凝固薬を服用中の患者を対象として、血栓形成過程の観察が行われた。
心房細動患者の治療においては、脳梗塞のリスクが高いことから、抗凝固薬の服用が推奨されている。抗凝固薬は、血栓と呼ばれる血液の塊が引き起こす脳梗塞などの治療・予防薬の総称。近年普及している直接経口抗凝固薬は、従来の「ワルファリン」に比べて、脳出血の発症や血腫の増大が少ないとされている。
同研究では、各抗凝固薬を内服している患者の血液について、新しい測定機器「T-TAS」を用いて詳細に解析。「T-TAS」のマイクロチップ内に形成される血栓を経時的に観察した結果、各薬剤によって血栓形成の速度が異なることが見いだされた。
脳出血の抑制機序につながっている可能性
石井医師らは同研究の結果から、「ワルファリン」製剤と直接経口抗凝固薬は、最終的な抗凝固作用は同程度であっても、薬剤によって血栓形成の過程が異なるとする。そしてその差異が、ある種の直接経口抗凝固薬の脳出血の抑制機序につながっている可能性があると結論している。
なおこの研究成果は、英国時間の8月7日、科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。
(画像はプレスリリースより)

不整脈で使用する抗凝固薬の種類によって血栓形成速度が異なることが判明 - 熊本大学
http://www.kumamoto-u.ac.jp/