九州大学・群馬大学・東京大学・京都大学と共同研究
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生理学研究所(以下「生理研」)は、8月3日、抗がん剤で心筋が萎縮する機序を解明したと発表した。
この成果は、生理研・西田基宏教授(九州大学教授兼務)が、九州大学・群馬大学・東京大学・京都大学と実施した共同研究におけるもの。抗がん剤の副作用軽減に期待が持てる知見だという。
TRPC3チャネルが心筋細胞を萎縮
抗がん剤治療は、手術および放射線治療と並ぶ「がん治療の3本柱」の1つとして高い医療実績を誇っており、全身性がん治療の第一選択とされる。しかしその一方で同療法は、疲労感や倦怠感、筋肉痛や心筋症といった副作用も持つ。抗がん剤が筋力低下を起こす原因については、今までよくわかっていなかった。
西田教授らの共同研究グループは今回の研究において、心筋細胞膜に存在し抗がん剤投与により発現増加するTRPC3チャネルが、活性酸素を発生することで心筋細胞を萎縮させることを発見。そして、TRPC3チャネルを阻害する化合物が、抗がん剤誘発性の心不全を軽減することを明らかにした。
化学療法の安全な継続使用を可能にする
同研究グループは、TRPC3チャネル活性およびTRPC3-Nox2相互作用を阻害する薬の開発は、化学療法の安全な継続使用を可能にすると期待。適応疾患の幅が広がる可能性についても、期待が持てるとしている。
さらに同研究グループは、今回明らかにした心筋萎縮のメカニズムが、寝たきりなど運動量低下による筋力低下にも関与している可能性を示唆。TRPC3-Nox2複合体を標的とする薬の開発が、健康長寿社会の実現にも貢献する可能性があるとしている。
(画像はプレスリリースより)

抗がん剤で心筋が萎縮する機序を解明 - 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生理学研究所
http://www.nips.ac.jp/release/2017/08/post_347.html