ALS類似の病態を呈するマウスで有効性を実証
東京大学医科学研究所は、7月19日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新たな治療法の可能性を発見したと発表した。
この成果は、同研究所・山梨裕司教授らの研究グループによるもの。運動神経からの制御シグナルを骨格筋に伝える神経筋接合部を標的として、その形成を増強する治療法の有効性を、ALS類似の病態を呈するマウスで実証したという。
運動神経と骨格筋を結ぶ唯一の「絆」
運動機能には、運動神経を介した骨格筋収縮の緻密な制御が必要となる。神経筋接合部は、この制御にあたって、運動神経と骨格筋を結ぶ唯一の「絆」の役目を果たす。この「絆」が機能しなくなると、呼吸を含めたあらゆる運動機能が失われる。
同研究グループはこれまでに、この神経筋接合部の形成に必須であるタンパク質としてDok-7を発見。また、そのヒト遺伝子(DOK7)の異常によって神経筋接合部の形成に欠陥のあるDOK7型筋無力症という遺伝病を発見。そして、標的とする細胞・組織にDOK7を発現させる遺伝子治療用の運搬体(DOK7発現ベクター)を投与することで、神経筋接合部の形成を後天的に増強できることを、明らかにしていた。
生存期間の延長も初めて実証された
同研究グループは今回、ALSモデルマウスに対してDOK7発現ベクターを投与することで、神経筋接合部形成を増強するという治療法を検証。投与されたマウスは、運動神経軸索末端の萎縮・脱離と、骨格筋の萎縮、そして運動機能の低下が抑制された。また、生存期間の延長も初めて実証されている。
同研究グループは今後も、ALSなどの難治性疾患の治療や病態解明に向けて、尽力するとしている。
(画像はプレスリリースより)

筋萎縮性側索硬化症の新たな治療法の可能性 - 東京大学医科学研究所
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