ヒトiPS細胞由来神経幹細胞の低酸素培養によって
九州大学は、6月9日、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞の低酸素培養によって、短期にアストロサイト分化を誘導できる方法を明らかにしたと発表した。
この成果は、同学大学院医学研究院・中島欽一教授らの研究グループおよび慶應義塾大学医学部・岡野栄之教授らの共同研究によるもの。神経疾患・発達障害の新たな治療薬開発につながる知見だという。
神経疾患の発症や病態に関与するアストロサイト
中枢神経系を構成するアストロサイトは、ニューロンの機能を支持する役目を担い、学習・記憶にも影響を与える。その機能的重要性から、てんかんなど多くの神経疾患の発症や病態に関与すると考えられている。
しかし、ヒト神経疾患特異的アストロサイトの機能解析は、ニューロンなどの解析と比較してあまり進んでいない。ヒトiPS細胞作製技術をもってしても、神経幹細胞にアストロサイトへの分化能を持たせるには、200日程度の長期間培養が必要となる。この異常に長い培養期間が、研究のネックになり続けていた。
精神疾患・発達障害の発症原因解明に期待
同研究グループは今回、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞を低酸素培養することで、従来よりも短期間でアストロサイトへの分化を誘導できる方法を明らかにし、そのメカニズムを解明した。さらにこの方法を患者由来神経幹細胞に応用することで、レット症候群患者の脳内で見られる表現型が培養系でも短期間で再現できることを、世界に先駆けて発見している。
同グループは今回の成果が、幅広い精神疾患・発達障害の発症原因の解明や、新たな治療薬開発につながることが期待できるものであるとしている。
(画像はプレスリリースより)

ヒトiPS細胞由来神経幹細胞の低酸素培養により、短期にアストロサイト分化を誘導 - 九州大学
http://www.med.kyushu-u.ac.jp/