「からだに優しいがん転移予防薬」の実現へ
国立循環器病研究センターは、5月26日、がんの信号を抑える心臓ホルモンのメカニズムを解明したと発表した。
この成果は、同センター研究所と株式会社国際電気通信基礎技術研究所・東京大学・大阪大学との共同研究によるもの。「からだに優しいがん転移予防薬」の実現に、期待が持てる知見だという。
心房性ナトリウム利尿ペプチド、すなわちANP
同研究では、マウスの乳がんや肺がんモデルに対して、心臓ホルモンである心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)を投与。投与した時とそうでない時の2通りの場合について、主要な転移先臓器の一つである肺組織の遺伝子発現が、網羅的に調べられた。
約2万種類におよぶ遺伝子に対する解析の結果、ANPは、がんにより増加する肺の遺伝子発現変化を抑制できることが明らかになった。一方、ANPは正常肺にほとんど影響が与えず、がんの増殖などには影響しなかったという。
新しい制がん剤を開発するための基盤情報に
同研究グループは、これらの結果からANPを、がんがある際に肺に起こる悪影響を特異的に緩和する能力を持つ「がんストレス緩和ホルモン」とする。また、ANPによる転移抑制効果が血管内皮細胞を介して得られることも証明し、がんストレス緩和における血管の重要性が示されたとしている。
同研究グループは現在、ANPによる抗術後転移・抗再発効果を検証するための多施設臨床研究を実施中。新しい制がん剤を開発するための基盤情報になることが、期待できるとしている。
(画像はプレスリリースより)

からだに優しいがん転移予防薬の実現に向けて がんの信号を抑える心臓ホルモンのメカニズム解明 - 国立循環器病研究センター
http://www.ncvc.go.jp/20170526_press_anp.html