狙った部位に対しアセチル化を選択的に導入
東京大学大学院薬学系研究科は、5月27日、細胞が用いるアセチル化剤(アセチルCoA)を活性化し、標的とするタンパク質の狙った部位に対しアセチル化を選択的に導入する触媒を開発したと発表した。
この成果は、同研究科・金井求教授らのグループによるもの。「触媒医療」への応用が期待される成果だという。
生命現象の制御に関与するヒストンの化学修飾
染色体は、ヒストンと呼ばれるタンパク質とDNAから構成されている。このヒストンは、生体内の酵素によってアセチル化など種々な化学修飾を受ける。そして化学修飾を受けたヒストンは、部位や修飾の種類によって異なる機能を発現させる。このためヒストンの化学修飾は、様々な生命現象の制御に関与していると考えられてきた。
同研究グループは今回、反応させたい部位の近くでのみアセチルCoAを活性化する、位置選択的な化学触媒「DSH」を開発。この触媒を別のアシルCoAと一緒に用いることで、アセチル化のみならず、ヒストンに対して多様なアシル化の導入を可能にした。
遺伝子転写を人工的に促進できる可能性
触媒「DSH」はまた、ヒストンの特定のアミノ酸残基を人工的にアシル化することで、染色体の物性を変化させることが明らかになった。この知見は、化学触媒を用いることで遺伝子の転写を人工的に促進できる可能性を示唆するものである、同研究グループはする。
同研究はこの触媒を、生体内酵素を人工触媒で代替して疾患を治療する「触媒医療」への応用が期待できる成果としている。
(画像はプレスリリースより)

染色体タンパク質の狙った部位に化学修飾を導入する触媒を開発 - 東京大学大学院薬学系研究科
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/news.html?key=1495864338