HMGB1が血液脳関門の破綻と炎症性サイトカイン産生の誘導に作用
岡山大学は4月27日、同大大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授(薬理学)の研究グループが、てんかんのメカニズムに、神経細胞から放出されるタンパク質High Mobility Group Box-1 (HMGB1)が関与することを明らかにしたと発表した。
てんかんは、脳の神経細胞ネットワークの異常興奮が原因で発症する慢性的な脳疾患である。
西堀教授の研究グループは、薬物によりてんかん発作を誘発したマウスのモデルにより、神経細胞の中でも特に海馬領域の神経細胞から放出される細胞核内タンパク質HMGB1が、血液脳関門の破綻と炎症性サイトカイン産生の誘導に作用することを明らかにした。
新たな難治性てんかん治療薬の開発に期待
今回の研究により、HMGB1の作用を中和する抗HMGB1抗体は、脳血管の保護作用と抗炎症作用を発揮し、その結果けいれん発作を抑制することがわかった。
抗HMGB1抗体の投与により、けいれん発作に伴う脳血管の透過性を抑制。また、同時に生じる炎症応答も抑制することが判明している。
特に注目される点は、てんかん原性の獲得に重要な働きをすると考えられているサイトカインIL-1βの発現を強く抑制すること。これにより、てんかん発作の出現過程の進行を抑制できる可能性が生じた。
現在は多くの抗てんかん薬が開発されており、患者の治療に役立てられている。しかし、その治療薬のほとんどがイオンチャンネルに直接作用するもので、全体の20~30%は、それらの薬に効果を示さない難治性てんかん患者である。
そうした中で、抗HMGB1抗体はイオンチャンネルを標的とせず、既存薬とは全く異なる作用機序で働く薬物であることから、新たな難治性てんかんの治療薬として期待される。
(画像は岡山大学ホームページより)

岡山大学ニュースリリース
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