創薬に向けた生合成リデザインの一歩となる成果
東京大学と高エネルギー加速器研究機構は、 2018年1月9日、生物由来生合成酵素の分子構造情報に基づく新規生体触媒の開発に成功したと発表した。
この成果は、東大薬学系研究科・阿部郁朗教授と中嶋優大学院生、高エネルギー加速器研究機構・千田俊哉教授らの研究グループによるもの。創薬に向けた合理的な生合成リデザインの一歩となる成果だという。
天然には存在しない新規化合物を創出
天然に存在する生物由来の物質(天然物)は、医薬品の原料として有用となる。しかし、その構造が複雑なため、これを人工的に合成することは難しいと考えられている。同研究グループは今回、天然物の酵素の構造情報に基づいて、その機能改変を実施。驚異的な多段階反応型酸化触媒の創出に成功した。
同研究グループはまず、複雑な骨格形成を触媒する酸化酵素について、X線結晶構造解析を実施。機能改変実験は、この解析により得られた構造情報に基づいて行われた。結果として、多段階反応を起こす新規酸化触媒の開発に成功。天然には存在しない新規化合物を創出している。
薬学研究への貢献が期待できる
多段階酸化反応を引き起こす酵素の結晶構造解析の報告例は極めて少なく、また構造解析情報を基に生み出された変異酵素は類を見ないと、同研究グループは自負。今後は、活性物質を合成する新規生体触媒を用いた物質生産法を開発することで、薬学研究への貢献が期待できるとしている。
(画像は高エネルギー加速器研究機構の公式ホームページより)

生物由来生合成酵素の分子構造情報に基づく新規生体触媒の開発 - 高エネルギー加速器研究機構
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