一度失われた霊長類の手指機能を、回復
京都大学は、2018年1月9日、一度失われた霊長類の手指機能を回復促進させる抗体治療に成功したと発表した。
この成果は、同学霊長類研究所・中川浩研究員(現・University College London研究員)らの研究グループによるもの。脊髄損傷や脳卒中といった中枢神経障害後における、運動機能回復の治療に繋がることが期待できる成果だという。
再獲得が厳しい手指運動機能
脊髄には、脳と手足の筋肉とを繋ぐ神経線維があり、大脳からの運動指令を手足に伝えている。この脊髄が、交通事故・スポーツ事故・転落などにより傷つくと、脳からの指令が適切に筋肉へ届かず、手足に麻痺症状が出現する。この状態が、いわゆる脊髄損傷とされる。
中枢神経障害後における運動機能回復の中でも、手指運動機能の再建は、困難度が極めて高い。日常生活レベルで必要とされる手指の器用さは、再獲得が厳しいとされてきた。
これまでの研究では、霊長類では脊髄損傷後もある程度の手指運動機能回復がみられることが確認され、また中枢神経が再生しにくい原因も少しずつ明らかにされている。しかし、有効な治療法の確立には未だ至っていなかった。
神経軸索の再生を効果的に高める
同研究グループは今回、神経軸索の再生を効果的に高めることができれば、運動機能の回復を促進させることができるのはないかと判断。サルを用いて、脊髄損傷により傷ついた神経の再生を促し、一度失われた霊長類の手指機能を回復促進させる抗体治療に取り組んだ。
結果、霊長類において脊髄損傷後のRGMa抗体治療が、神経軸索の再生力および運動機能の回復を促進させる有用な手段の一つであることが分かったという。同研究グループはこの成果について、運動機能回復を促進させる治療手段などの一助となることが期待できるものとしている。
(画像はプレスリリースより)

脊髄損傷後に指の器用さ回復、サルで抗体治療に成功 - 京都大学
http://www.kyoto-u.ac.jp/