ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功
国立大学法人大学院医学系研究科と国立大学法人九州大学生体防御医学研究所の研究グループは12月15日、生殖医療・再生医療への貢献が期待される、ヒト胎盤幹細胞(TS細胞)の樹立に世界で初めて成功した、と発表した。
研究成果は、日本時間12月15日Cell Stem Cell誌の電子版に掲載された。
細胞性トロフォブラストよりヒトTS細胞を樹立
胎盤幹細胞(TS細胞:Trophoblastic stem cell)は、胎盤の基となる細胞で、高い自己複製能と胎盤の細胞への分化能力をもつ。胎盤は、胎児に栄養や酸素を供給する重要な器官である。
マウスでは、1998年TS細胞の培養法が確立され、マウス胎盤の研究に広く利用されている。しかし、ヒトTS細胞の樹立は困難であった。
研究グループは、ヒト胎盤から細胞性トロフォブラスト(Trophoblast)を高純度に分離し、遺伝子を網羅的に解析した結果、細胞性トロフォブラストの増殖を制御する可能性がある因子を突き止めた。
培養条件を検討し、細胞性トロフォブラストよりヒトTS細胞を樹立することに世界で初めて成功した。
ヒトTS細胞は5か月以上培養でき、ホルモン分泌や栄養・ガス交換に働く合胞体トロフォブラストや、子宮内で母体の血管の再構築を行う絨毛外トロフォブラストの細胞へ分化する能力を保持していた。
さらに、ヒトTS細胞の遺伝子発現とDNAメチル化状態は、生体内のトロフォブラストと極めて類似していた。
培養したヒトTS細胞は、胎盤の発生や機能、胎盤異常によるヒト疾患の病態解明や治療法開発に有用で、将来生殖医療や再生医療などの医療産業に向け、医薬品や医療技術の創出への貢献が期待される、とのこと。
(画像はプレスリリースより)

東北大学大学院医学系研究科のプレスリリース
http://www.med.tohoku.ac.jp/news/3618.html別掲
http://www.med.tohoku.ac.jp/別掲
https://www.amed.go.jp/news/release_20171215.html