3つの小分子化合物を用いて
慶應義塾大学医学部生理学教室と順天堂大学大学院医学研究科ゲノム・再生医療センターの共同研究チームは、10月27日、3つの小分子化合物を用いてヒトiPS細胞の分化能力を促進する基盤技術を開発したと発表した。
この成果は、再生医療・病態研究・医薬品開発を加速度的に促進させる基盤になることが期待できるものだという。
疾患モデルの病態発現を短期間で再現
ES細胞やiPS細胞といった多能性幹細胞は、体のあらゆる組織や細胞に分化可能な細胞株であり、再生医療など幅広い活用が期待されている。しかし、特にiPS細胞は「細胞株ごとの分化効率にばらつきがある」「分化速度が比較的ゆっくりである」という性質を有し、高効率な分化誘導の実現にあたっては問題があった。
共同研究チームは今回、「SB431542」「Dorsomorphin」「CHIR99021」という3種の化合物を細胞株の培地に5日間添加すると、ヒト多能性幹細胞が平面的に分化促進された状態へ短期間で誘導されることを発見。この誘導を経た細胞は、目的細胞への分化効率・速度ともに大きく上昇し、疾患モデルにおける病態発現を短期間で再現できることも発見している。
あらゆる応用技術に寄与するもの
共同研究チームは、3つの小分子化合物を用いて多能性幹細胞が誘導された状態を「CTraS」と定義。「CTraS」は、特定の細胞に分化しにくい株であっても目的細胞へと高効率に分化させるため、目的の細胞に分化しやすい細胞株を選別することが不要になり、大きく研究効率が上昇したという。
同チームは「CTraS」を介した分化促進について、多様な細胞系譜に応用可能であるため、ヒト多能性幹細胞を用いたあらゆる応用技術に寄与するものであるとしている。
(画像は順天堂大学の公式ホームページより)

3つの小分子化合物を用いてヒトiPS細胞の分化能力を促進する基盤技術を開発 - 順天堂大学
http://www.juntendo.ac.jp/news/20171027-02.html