X線結晶構造解析への応用において有用
大阪大学蛋白質研究所は、9月15日、全く新しいデザインのフラグメント抗体のフォーマットを開発したと発表した。
この成果は、同研究所・有森貴夫助教、高木淳一教授らの研究グループによるもの。創薬ターゲット蛋白質など、医学的・生物学的に重要な蛋白質であるX線結晶構造解析への応用において有用であることが期待される成果だという。
バイオ医薬品として注目を集める抗体分子
抗体分子は近年、バイオ医薬品として注目を集めている。研究用のツールとしても様々な分野で応用されており、用途によっては断片化して小さくした抗体(フラグメント抗体)が利用されることも少なくない。
フラグメント抗体は、様々なデザインのものが開発されている。しかし、従来のフラグメント抗体はいずれも生産性や安定性などに問題を抱えており、万能と呼べるフラグメント抗体のフォーマットはこれまで存在しなかった。
こうした状況を受けて同研究グループは、全く新しいフラグメント抗体のフォーマットを開発し、『Fv-clasp』と命名した。様々な生化学的な実験の結果、『Fv-clasp』は従来のフラグメント抗体が持つほとんどの欠点を克服し、優れた性質を有することが明らかになっている。
生体内でも高い安定性を示す
『Fv-clasp』は、既存のフラグメント抗体よりも非常に結晶になりやすいという性質を持つ。そのため、結晶になりにくい創薬ターゲット蛋白質の構造決定がさらに加速することが期待できるという。また『Fv-clasp』は、生体内(血液中)でも高い安定性を示すことが予想されるため、低コストの抗体医薬としての応用も期待できると、同研究グループはしている。
なおこの研究成果は、米国科学誌『Structure』において9月15日に公開された。
(画像はプレスリリースより)

新しいデザインの小型抗体フォーマットを開発 創薬ターゲット蛋白質の結晶構造解析の促進に期待 - 大阪大学蛋白質研究所
http://www.protein.osaka-u.ac.jp/