脳梗塞治療への臨床応用に期待
横浜市立大学は、9月13日、神経回路形成因子「LOTUS」が、脳梗塞後の軸索再生を促進して機能改善をもたらすことを発見したと発表した。
この成果は、同学大学院生命医科学研究科生体機能医科学研究室・竹居光太郎教授と大学院医学研究科脳神経外科学教室・川原信隆教授(当時)の研究グループによるもの。脳梗塞治療への臨床応用に期待が持てる成果だという。
NgR1の強力な拮抗物質
損傷や疾患で破壊された脳内の神経回路を再生するには、胎生期における神経回路形成の過程を再現する必要がある。しかし、損傷脳の脳内環境は胎生期とは大きく異なり、軸索再生阻害因子が多量に存在するため、再生は困難であることが知られている。軸索再生阻害因子やその受容体であるNgR1を創薬標的として、世界中で研究が進められているが、有効に制御する物質は未発見のままだった。
横浜市立大の研究グループは2011年、嗅覚情報を伝える2次伝導路である「嗅索」と呼ばれる神経投射路の形成に重要な分子として、神経回路形成因子「LOTUS」を発見。その際、嗅索に発現するNogoとNgR1の相互作用を遮ることで、嗅索の神経束形成に寄与することが判明した。
その後「LOTUS」は、Nogo以外の軸索再生阻害因子においても軸索伸長阻害を遮断する機能を有することが判明。「LOTUS」が、NgR1の強力な拮抗物質であることが明らかになった。
薬物治療や遺伝子治療などにも期待
同研究グループによる今回の研究で、「LOTUS」は、脳梗塞後の神経再生促進物質として機能することが示された。この知見は、「LOTUS」の生理機能を利用した神経再生医療技術の開発に直接的に繋がるものであると、同研究グループはする。
また同研究グループは、精製「LOTUS」タンパク質を体の外から投与する薬物治療や、「LOTUS」を遺伝子導入する遺伝子治療など、神経再生医療技術の発展についても期待しているという。
(画像はプレスリリースより)

脳梗塞後の機能回復に有効な物質LOTUS ~脳梗塞治療への臨床応用に期待~ - 横浜市立大学
http://www.yokohama-cu.ac.jp/