小児がんのひとつ、神経芽腫
名古屋大学は、9月7日、小児がんのひとつである神経芽腫について、がん化機構の一端を解明したと発表した。
この成果は、同大大学院医学系研究科分子生物学・坪田庄真研究員と門松健治教授らの研究グループによるもの。神経芽腫に対する分子標的薬の開発が期待される成果だという。
ポリコーム抑制複合体2(PRC2)が発がんに関与
神経芽腫は、患者の90%が10歳未満に発症し、発症年齢が高いほど患者の予後は悪い疾患。高リスク神経芽腫は、5年生存率が50%といわれており、分子標的薬を含む新規治療法開発が望まれている。
同疾患は、人間の体が形成される発生期に発症することから、がん化と正常発生の細胞分化プログラムが密接に関連していると考えられている。しかし、説明可能な遺伝子異常は少なく、その発がん機構はよくわかっていなかった。
同研究グループは今回、神経芽腫モデルのTH-MYCNマウスを用いて、がん化した細胞を選択的に培養できる新規の細胞培養法を確立。がん化初期の細胞を捉え、網羅的な遺伝子発現解析・エピゲノム解析を行い、エピゲノム制御分子のひとつであるポリコーム抑制複合体2(PRC2)が発がんに関与していることを解明した。
PRC2をターゲットにした分子標的薬の開発を
同研究グループはさらに、約500例の神経芽腫患者から集められた遺伝子発現データを解析。その結果、PRC2によって制御されるターゲット遺伝子の発現が、神経芽腫の悪性度と著しく相関することも明らかにしている。
同研究グループは今回の研究により、神経芽腫の発がん機構の一端が明らかになったとする。そして、PRC2をターゲットにした分子標的薬の開発が期待されるとしている。
(画像はプレスリリースより)

小児がん「神経芽腫」のがん化機構の一端を解明 - 名古屋大学
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/