初めてメカニズムを解明
田中聡司大学院生、疋田隼人助教、竹原徹郎教授(大阪大学 大学院医学系研究科 消化器内科学)および吉森保教授(大阪大学 大学院医学系研究科 遺伝学/生命機能研究科 細胞内膜動態学)らの研究グループは、肝臓でRubiconの発現が上昇することが脂肪肝の原因であることを明らかにした。
本研究成果は、2016年9月下旬以降、米国科学誌「Hepatology」にオンライン公開される予定。
Rubiconとは
Rubiconは、本研究グループの吉森教授らにより2009年に発見された、オートファジーを抑制する働きをもつタンパク質。
オートファジーは、細胞内に存在するタンパク質や構造体を二重膜で包み込み、ライソゾーム(多種の消化酵素をもつ細胞小器官)と融合することで包み込んだ内容物を分解する機構。
オートファジーが開始すると、細胞質内に隔離膜が出現する。隔離膜は伸長して分解対象物を取り囲み、オートファゴソームを形成する。オートファゴソームはライソゾームと融合してオートライソゾームとなり、ライソゾーム内の消化酵素により分解対象物は分解される。
本研究では、過剰脂肪酸摂取下でRubicon蛋白が蓄積し、オートファゴソームとライソゾームの融合が阻害され、オートファジー機能が低下することが分かった。
今後への期待
本研究成果により、今まで有効な薬物治療が存在しなかった脂肪肝に対し、Rubiconを標的として、患者の肝内脂肪を減少させ、肝障害を軽減させる治療薬の開発が期待される。これにより脂肪肝から重症化する非アルコール性脂肪肝炎や肝がんの発症を抑制することも期待される。
また、過剰脂肪酸摂取という、現代社会の問題となっている過栄養摂取が、直接オートファジー機能を低下させることにつながることが明らかになり、適度な栄養摂取の大切さを改めて知らしめる警告となった。

国立研究開発法人日本医療研究開発機構プレスリリース
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