免疫療法に新たな光
理化学研究所統合生命医科学研究センター免疫細胞治療研究チームの藤井眞一郎チームリーダーらの研究チームは、現在開発中のがん治療製剤「人工アジュバントベクター細胞(以下、aAVC)」に、特徴的な抗がん作用機構を解明したと発表した。
キラーT細胞の動きに注目
研究チームによると、腫瘍が十分に大きくなったマウスにaAVCを静脈内投与すると、腫瘍が壊死し、縮小することがわかった。また、その腫瘍組織を解析した結果、通常は腫瘍内に入り込むことができないキラーT細胞が腫瘍内にアクセスできるようになることを突き止めた。
さらに、aAVCを投与したマウスを1年後に解析したところ、抗原特異的なメモリーキラーT細胞が維持されており、再び同じ抗原に遭遇すると、このメモリーキラーT細胞が増幅し、免疫を活性化することもわかった。すなわち、aAVC療法は、がんに対する記憶免疫を誘導でき、転移および再発予防にも有効であることを示した。
今後への期待
研究チームは現在、今回得られた新しい抗がん効果とそのメカニズムを元に、利権創薬プログラムのプロジェクトとして臨床治験に向け、新たなaAVC細胞製剤開発の研究を進めている。
従来の細胞療法は、患者本人の自己血液由来の細胞を採取するオーダーメード療法だったため、医薬品としての開発が困難だったが、他家細胞を利用するaAVCは品質の安定化を図ることができ、医薬製剤化が期待できる。将来、開発、臨床が進み、この新製剤の安定性が承認されれば、免疫療法の画期的な進歩となるだろう。
(画像はプレスリリースより)

理化学研究所プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160701_2/