既存の治療法では不十分
東北大学の研究グループは、2016年6月15日、糖尿病性腎症の血液凝固による関与を明らかにし、新規の治療標的を同定したと発表した。
糖尿病性腎症は慢性腎不全や予後不良による心血管合併症の発症リスクが高い。慢性腎不全患者で糖尿病性腎症に由来するケースが増えており、透析導入の増加にも拍車をかけている。
これまでに行われてきた食事・運動療法や降圧剤などの治療法では十分とはいえず、糖尿病性腎症の進行を抑え、合併症の発症を防ぐ新たな治療法の開発が求められている。
血液凝固因子の役割に着目
糖尿病性腎症は血液凝固の亢進で知られているが、血液凝固因子は止血の作用と共に、プロテアーゼ活性化受容体の活性化による臓器傷害との関与も指摘されている。
研究グループは、血液凝固の中枢となる第X因子とその標的受容体のプロテアーゼ活性化受容体2経路に注目し、凝固第X因子阻害薬が尿中アルブミン排泄量と腎臓の組織傷害を改善することを糖尿病性腎症モデルマウスとプロテアーゼ活性化受容体2欠損糖尿病性腎症モデルマウスで確認した。
心房細動などによる血栓・塞栓症を予防する際に凝固第Xa因子阻害薬が処方されているが、今後は糖尿病性腎症に対する使用も考えられる。選択的プロテアーゼ活性化受容体2阻害薬については出血リスクを軽減し、創薬につながる可能性がある。
(画像はプレスリリースより)

東北大学 プレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp/