組織再生研究を加速させる新技術
2016年5月5日、公立大学法人大阪府立大学ナノ科学材料研究センター・萩原将也テニュアトラック講師、九州工業大学の川原知洋准教授らの研究チームは、立体的に細胞組織を培養する際に用いる、細胞を多方面から観察できる三次元細胞組織培養プラットフォームの開発に成功したことを発表した。
背景
細胞組織の三次元培養は、多くの研究分野において必須の実験である。しかし、従来の三次元培養方法は、プラスティックやガラス容器の上に滴下したコラーゲン等のゲル内にサンプルを埋包する形が多いが、サンプルサイズが大きく厚みがある場合は、顕微鏡の光が透過せず観察が困難となる問題が存在する。
また、サンプルの三次元形状の観察は一般にレーザー顕微鏡が用いられているが、細胞へのダメージが避けられず、装置が非常に高価なため、利用が限定的だった。そのため、非侵襲で細胞組織の立体観察技術の開発が求められてきた。
研究成果
研究グループは、細胞外基質とアガロースゲルを組み合わせて作成した実験プラットフォーム(ハイブリッドゲルキューブ)を構築した。
ハイブリッドゲルキューブの開発により、培養中のサンプルをピンセットで容易に持ち上げたり回転させたりすることができるようになり、前処理は一切不要かつ通常の顕微鏡においても対象組織の三次元形状認識が可能となった。また、厚みのあるサンプルにおいても、同様に複数の角度からの詳細観察が可能となった。
さらに、ハイブリッドゲルキューブはサンプルサイズや培養用途に応じた作製が可能であるため、汎用性が非常に高く、かつ安価な材料費で作製可能である。これらのことから、研究が進められている体外組織再生分野のみならず、新薬の評価テストや脳研究においても大きく貢献することが期待される。
(画像はプレスリリースより)

大阪府立大学 プレスリリース
http://www.osakafu-u.ac.jp/data/.pdf