ARL3 STAT3依存的な遺伝子発現や細胞増殖を抑制
2016年4月15日、北海道大学薬学研究院・松田正教授の研究グループは、がん・免疫応答の司令塔分子であるSTAT3の新規結合蛋白として低分子量G蛋白ARL3を同定し、ARL3発現抑制によってSTAT3活性化に重要なリン酸化修飾や核への蓄積、STAT3依存的な遺伝子発現や細胞増殖が抑制されることを発表した。
背景
がんや免疫応答に重要な役割を担うサイトカインIL-6の作用は、主に信号伝達分子である転写因子STAT3によるものであることが明らかにされており、STAT蛋白ファミリーの中でもSTAT3は、生存に必須であることが示されている。
STAT3は、炎症性免疫疾患やがん増悪化に関与するとともに自身もがん化を誘導する作用を有し、多くのがん種でSTAT3の異常な活性化が報告されている。
研究成果
研究グループは、酵母ツーハイブリッド法により、新規STAT3結合タンパク質として低分子量G蛋白ARFファミリーの一つであるARLを同定し,ヒト胎生腎がん細胞293T細胞内でも両者が結合することを確認した。
ARL3の遺伝子発現を低下させた細胞では、STAT3による遺伝子発現誘導作用に必要なリン酸化修飾や核への蓄積が低下した。また、ARL3はSTAT3に結合し、STAT3のリン酸化や核への蓄積を調節し、STAT3依存的な遺伝子発現や細胞増殖を制御する生理活性分子であることがわかった。
今回の研究成果から、がんや自己免疫疾患をはじめとする多種多彩な病気への関与が示されている、STAT3を標的とした治療薬の開発を行う際に、STAT3-ARL3相互作用を標的とする新規のがん・自己免疫疾患治療薬の開発が期待できる。
(画像はプレスリリースより)

北海道大学 プレスリリース
http://www.hokudai.ac.jp/news/160415_pharm_pr.pdf