日本肺癌学会と日本肺癌患者連絡会の連名による要望書
2016年10月25日、日本肺癌学会は、全国の日本肺癌患者連絡会と連名で「PD-1強陽性進行非小細胞肺癌に対する抗PD-1抗体ペムブロリズマブの1次治療の早期承認」について厚生労働大臣に要望書を提出した。
ペムブロリズマブは、細胞傷害性T細胞の活性を下げ攻撃を躱そうとするがん細胞の免疫チェックポイントという仕組みを、阻害して元に戻し、細胞障害性T細胞が正常に機能するように助力する「免疫チェックポイント阻害薬」の1種。
免疫チェックポイント阻害薬はがん細胞を直接攻撃するのではなく、人の持つ元来の免疫を向上させることが目的であるため、副作用が少なく注目度の高い治療法の1つである。
2016年2月に行われた試験では、ペムブロリズマブは今まで治療に用いられていたドタキセルに対しても優越性を示したため、承認申請されている。
また、欧州臨床腫瘍学会では、進行非小細胞肺癌患者の1次治療を対象とした国際共同臨床試験において、無増悪生存期間や全生存期間などの点で非常に良好な試験結果が見られたと発表された。
世界的に用いられている肺癌の診療ガイドラインは早くも非小細胞癌の1次治療において、ペムブロリズマブがカテゴリー1(高レベルのエビデンスに基づくもの)であるとして推奨することとなった。
切除不能な進行非小細胞肺癌に対するペムブロリズマブの1次治療適応が一刻も早く承認されれば、多くの患者を治療出来るため、今回の要望書を提出することとなったのである。
進行非小細胞肺癌とは
肺癌の中でも、がん細胞の形態によって、小細胞肺癌と非小細胞肺癌に分けられるが、非小細胞肺癌は化学療法や放射線治療の効果が低いとされている。
症状の進行度によって治療手段が異なり、初期段階では手術で完全に切除することが出来るが進行度合いが重いもの、特に手術しても再発する可能性が高い場合や年齢・体力的な観点から手術に耐えうることが難しい場合は、切除手術を行わず薬剤による緩和治療のみ行う。
非小細胞肺癌患者の57%はかなり進行してから診断されるため、5年生存率はわずか5%であるなど、治療が困難な病の1つであるが、今回の要望書によって有効な治療を早期に行えるようになれば多くの患者に役立つと考えられている。

日本肺癌学会
https://www.haigan.gr.jp/