ポリヒスチジンの高い細胞膜透過を発見
鳥取大学農学部生体制御化学分野・岩﨑崇助教と、アスビオファーマ株式会社の探索技術ファカルティ・岡田浩幸博士らの研究グループが、『ポリヒスチジン』に高い細胞膜透過能が存在し、生体内で腫瘍組織(線維肉腫)に集積することを発見した。
今回の発見の注目点は、ヒスチジンが連続したのみの単純なペプチドであるポリヒスチジン(H16)が、既知の細胞膜透過ペプチドとは異なり、正電荷を帯びていないにもかかわらず高い細胞膜透過を示したことだ。
従来の細胞膜透過ペプチドは正電荷を帯び、血清の存在下で透過率が抑制されることが知られている。しかし、ポリヒスチジン(H16)は正電荷に非依存的で血清の影響を受けないことが確認された。
研究の経緯と成果
ポリヒスチジン(H16)を融合したGFPが細胞内に取り込まれたことから、ポリヒスチジン(H16)を利用してタンパク質を細胞内へ導入することが可能であると認められた。
また、非上皮性の悪性腫瘍の一種であるヒト線維肉腫細胞株(HT1080)での細胞膜透過を調べたところ、ポリヒスチジン(H16)は代表的な細胞膜透過ペプチドであるオクタアルギニン(R8)よりも、14.35倍高い細胞膜透過を示した。
さらに、ヒト線維肉腫細胞株(HT1080)を移植したマウスにポリヒスチジン(H16)を尾静脈注射投与したところ、ポリヒスチジン(H16)の腫瘍組織での集積が認められた。
これらの結果から、ポリヒスチジン(H16)は新しい細胞膜透過ペプチドであり、薬物輸送キャリアーとして有力な新素材であることが明らかであり、今後のDDSの開発につながると期待される。

鳥取大学 トピックス
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