日常生活と医療で新たな知見
高齢化社会の進展に伴い、認知症は大きな社会問題となっている。その本質的な治療方法はいまだ確立されていないが、東京大学の研究チームはアルツハイマー型認知症について、カマンベールチーズが抑制効果を発揮することをマウス実験で発見した。
一方、アルツハイマー型認知症治療薬の研究開発を進めているエーザイは、同病治療薬の世界市場が2030年、約3兆2000億円に達するとの推計をまとめており、日常生活と医療分野双方で新たな知見が広まることに期待が集まっている。
アミロイドβの脳内沈着抑制
東京大学大学院農学生命科学研究科の研究によると、アルツハイマー型認知症の症状を再現したマウスが、カマンベールチーズの摂取により、アルツハイマー型認知症の原因と見られるタンパク質「アミロイドβ」の脳内沈着が抑制された。
研究は、同研究科の中山裕之教授らの研究グループ、キリン株式会社R&D本部基盤技術研究所、小岩井乳業株式会社によるもの。カマンベールチーズの発酵工程で生成される「オレイン酸アミド」と「デヒドロエルゴステロール」が、脳内で異物の排除を担うミクログリアの働きに作用していた。
これまで、チーズ等の発酵乳製品を摂取することで認知機能の低下が予防されるという疫学的な報告があったが、カマンベールチーズを用いた動物実験で、アルツハイマー病予防への有用性を確認した。将来的な認知症予防への貢献が期待される。
発展途上国も含め需要予測
一方、エーザイの推計は、認知機能低下を未然に抑えたり、病気の進行を止めたりする次世代型治療薬について、発展途上国の需要も含めて予測した。
エーザイは、調査会社のデータを基に患者数、診断率、処方率などを推定。製薬各社が開発を進めている薬がいずれも今後に発売されるという前提で市場規模を算出した。
認知症が進むことを遅らせる薬「アリセプト」をエーザイは販売中だが、より効果的な薬として開発コード「E2609」などの開発に取り組んでいる。E2609は、アルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドβを減少させる効果がある。
(画像は東京大学大学院農学生命科学研究科のホームページから)

東京大学大学院農学生命科学研究科 プレスリリース
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2015/20150310-1.htmlエーザイ 記者懇談会資料
http://www.eisai.co.jp/pdf/ir/mat/4523_150305.pdf