気道の再生・難病の治療薬開発へ
2015年12月25日、京都大学医学研究科三嶋理晃教授の研究グループは、大阪大学生命機能研究科・医学系研究科月田早智子教授の研究グループとの共同研究により、世界で初めて、ヒトiPS細胞から気道繊毛上皮細胞を含む気道上皮細胞を効率的な分化方法の確立を発表した。
背景
気道の粘液繊毛クリアランスの異常をもたらす疾患は非常に多く、一方で、嚢胞性線維症や原発性繊毛機能不全症など粘液繊毛クリアランスに直接関係する遺伝子の異常により、若年時から感染症を繰り返す重篤な疾患も存在する。
ヒトiPS細胞から気道繊毛上皮細胞を含む気道上皮細胞を分化させる研究を進める際に、患者やボランティアから同意を得て取得した気道上皮細胞が用いられてきた。そのため、制限のない気道繊毛上皮細胞の入手は難しく、解決策の一つとして、ヒトiPS細胞を気道上皮細胞に分化させる技術の開発が期待されている。
研究成果
今回、研究グループはヒトiPS細胞を段階的に分化させ、表面タンパク質Carboxypeptidase M(CPM)を用いて肺の元となる細胞を単離し、サイトカインなどを加えながら、様々な条件で三次元培養を試みた結果、気道上皮細胞成分を含む嚢胞構造作製方法を開発した。
また、発生の様々なプロセスで分化に重要とされるNotchシグナルの抑制により、気道繊毛上皮細胞や神経内分泌細胞の効率的な誘導が行われた。さらに、共同研究によって、ヒトiPS細胞から作られた気道繊毛上皮細胞が、体内と同様に規則正しく振動し、粘液を動かす機能を持つことが示された。
今回、ヒトiPS細胞から効率よく気道上皮細胞を分化させる技術が確立したことで、これらの病態解明や創薬研究の大きな前進が期待される。
(画像は「京都大学 研究成果」より)

京都大学 研究成果
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/