細胞を傷つけずに高感度計測
東京大学大学院工学系研究科の一木隆範准教授らと株式会社ニコンの共同研究グループは、細胞の酸素代謝を、細胞を傷つけずに計測できる、柔らかい光学式シート型センサを世界で初めて開発した。
この光学式シート型センサは培養細胞や3次元組織切片に被せるだけで、細胞を傷つけずに、代謝活動によるわずかな酸素消費量を高感度に測定できる。
背景
近年、iPS細胞などの細胞技術の発達により、医薬品開発から再生医療研究まで、培養細胞の使用範囲が大きく拡大しており、使用する細胞の品質評価がかかせない。
品質評価の指標の一つとして、細胞の呼吸による酸素消費量がある。しかし、現在市販されている酸素センサでは、培養液中の酸素濃度計測は可能だが、個々の細胞の酸素消費量計測はできない。また、細胞を傷つけてしまうという問題点が存在するため、培養状態で代謝計測できる簡便な手法の開発が求められてきた。
研究成果
研究グループは、培養シャーレ中で細胞の代謝活性を細胞の損傷なく計測でき、終了後には簡単に取り除ける、柔らかいシート型センサを開発した。
1分間あたりに細胞が消費する酸素量はごくわずかだが、今回開発したセンサでは、マイクロチャンバー構造により細胞上に小さな閉鎖空間を形成することで、細胞の酸素消費量の高感度計測が可能になった。
このシートを培養細胞や生体組織に載せ、自動光学計測システムと組み合わせて使うことで、1分間あたり100箇所の自動計測を行うことができ、がん細胞や脳組織中の神経細胞の酸素代謝を計測することに成功した。
今後は、脳や肝臓、膵臓といった複雑な臓器の機能評価と関連する疾患の治療薬開発や、再生医療に使う細胞の品質管理技術への応用が期待される。
(画像はプレスリリースより)

東京大学 プレスリリース
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