高度な培養技術を維持
京都大学再生医科学研究所・岩田博夫名誉教授とパナソニック株式会社は共同で、自動培養装置を開発した。また、開発した自動培養装置を用いて、長期間培養を行い、ヒトiPS細胞の主要な特徴である未分化性・多分化能が十分に維持できていることを確認した。
背景
2014年、iPS細胞由来の細胞を用いた世界初の臨床研究が国内で開始され、再生医療、創薬分野におけるiPS細胞の利用が今後もより増加していくと考えられる。しかし、ヒトiPS細胞は、一般的な細胞と比較して高度な培養技術の習得が必要であり、土日を含む毎日の培養作業が大きな負担となっていた。
それらの問題を解決するために自動培養装置の開発が進められており、胚性幹(ES)細胞やiPS細胞の自動培養装置に関する報告はあるものの、装置が大型である、若しくは短期間の培養に対する評価しか行っていないという課題が存在していた。
研究成果
研究グループは、熟練培養者の作業を動画解析し、細胞培養動作をロボット技術により再現した。また、細胞培養に必要な機器を全て備えた上で、従来の自動培養装置に比べ小型化に成功した。
開発した自動培養装置を用いて、ヒトiPS細胞のフィーダー細胞上で未分化維持培養を行ったところ、細胞培養皿上で均一にiPS細胞が未分化性を維持しながら増殖した。
また、自動培養装置で多継代かつ長期間のヒトiPS細胞の連続培養を実施した。長期間培養後においてもヒトiPS細胞は未分化性を維持し、その長期間培養後の細胞を適切な培養条件で分化培養を行うと、ドパミン神経や膵内分泌細胞へ分化した。
長期間の安定的なヒトiPS細胞生産が確認できたことにより、今回開発された自動培養装置による、創薬や再生医療などの研究発展が期待される。
(画像は京都大学「研究成果」より)

京都大学 研究成果
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/