創薬開発に役立つ新技術
神戸大学工学研究科博士後期課程・海嶋美里、自然科学系先端融合研究環・石井純准教授、工学研究科・近藤昭彦教授と、産業技術総合研究所・福田展雄主任研究員の共同研究グループは、細胞膜上に存在する創薬標的分子(膜タンパク質)に対して、より強く結合するタンパク質を選抜できる技術を開発した。
膜タンパク質
膜タンパク質は生体の生理機能を制御する重要な役割を担っており、その異常によりがんなどの疾病を引き起こす。そのため、治療薬の候補として膜タンパク質に結合し、生理機能を調節できる分子を考えることは新たな医薬品の開発につながる。
研究成果
研究グループは、ヒトと同じ真核生物である酵母のシグナル伝達機構に着目した。シグナル伝達分子が膜に局在することが、酵母の生育に必須であることを利用し、「膜タンパク質」に結合するタンパク質の選抜方法を開発した。
さらに、研究グループは「膜タンパク質」により強力に結合する「変異型タンパク質」に対しても、タンパク質間の結合が競合する細胞内環境を人工的につくり出すことで選抜する方法を開発した。その結果、がんの標的分子であるヒトの上皮成長因子受容体に対して、この手法が応用可能であることを実証した。
今後は、がんなどの疾病に関わる膜タンパク質を標的とした、様々な創薬標的分子に対して、より強く結合する変異型タンパク質を選抜することによる、新たなバイオ医薬品の開発のほか、創薬に時間や費用の低下が期待される。
(画像はプレスリリースより)

神戸大学 研究ニュース
http://www.kobe-u.ac.jp/NEWS/research/2015_11_20_01.html