新しい潰瘍性大腸炎治療薬開発へ
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・渡辺守教授を医学専門家とする研究グループは、新規の潰瘍性大腸炎治療薬の前期II相臨床試験の結果を発表した。全国42施設がこの臨床試験に参加し、この新薬が中等症の潰瘍性大腸炎患者に対して有効であるという結果を得た。
潰瘍性大腸炎は原因不明の大腸の慢性炎症性疾患であり、国内でも患者数は増加し、現在約16万人の患者が存在する。既存の治療では改善しない患者もいるため、新しい薬剤の開発が望まれている。
研究成果
開発中の新規潰瘍性大腸炎治療薬AJM300は味の素製薬株式会社が開発した薬剤で、リンパ球の腸管への遊走に必須の分子であるα4 integrinを阻害する経口薬である。同様の作用機序を持つ抗体製剤は、海外で既に炎症性腸疾患治療に用いられているが、経口剤は海外でも存在していなかった。
AJM300の有効性、安全性を調べるため、中等症の潰瘍性大腸炎患者102名を、治療薬若しくはプラセボに無作為に割り付け、8週間投与した結果、有効率はプラセボ群で25.5%であったのに対して、治療薬群では62.7%と有意に高率だった。
また、臨床的寛解率、内視鏡的寛解(粘膜治癒)率も、治療薬群でプラセボ群よりも高率であるとともに、試験期間中に重篤な有害事象は認めなかった。今回の研究で、潰瘍性大腸炎に対して日本で開発された薬剤が有効であったという結果が得られた。
今後への期待
42施設の参加によるオールジャパン体制で行った臨床試験の成果により、日本で潰瘍性大腸炎の新しい治療薬が十数年ぶりに開発され、海外の一流誌に掲載され日本の炎症性腸疾患診療のレベルが高く評価されている。この新薬が、潰瘍性大腸炎治療の新たな選択肢になることが大いに期待される。
(画像はプレスリリースより)

東京医科歯科大学 プレスリリース
<a href=" http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20151113.pdf" target="_blank"> http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20151113.pdf</a>